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金沢簡易裁判所 平成10年(ろ)113号 判決 1999年5月14日

主文

被告人を懲役六月に処する。

未決勾留日数のうち一二〇日を右刑に算入する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、平成一〇年九月二〇日午後七時三〇分ころ、石川県金沢市諸江町上丁三三八番地所在のパチンコプラザ店内において、小山嘉晄所有に係る現金約三万二二〇〇円及び名刺等七点在中の財布一個(時価約四〇〇〇円相当)を窃取したものである。

(証拠の標目)省略

(事実認定についての補足説明)

前掲各証拠によれば、被告人が、判示日時にパチンコプラザの店内にいたこと、そして、六七二番のパチンコ台前の通路を通りかかり、六七二番台の前方で、同台で遊技中の小山嘉晄がズボンの左ポケットから足元に落としたままの同人所有の財布を拾得し、そのまま立ち去ったので、これを目撃した宇野しげ子(そのとき、六七〇番台で遊技中。)がこれを右小山に知らせ、小山は、妻や六七六番台で遊技中被告人が何かを拾得するのを目撃していた大井司とともに、持ち去った被告人を探したが、発見できなかったことが認められる。

これについての証人宇野しげ子、同大井司の各供述は、いずれも、具体的で詳細であり、当時の状況を撮影したビデオテープを元にした写真とも一致しており、また、本件について同人らがことさら虚偽の供述をする理由や同人らにその供述の信用性を疑わせる事由は認められないので、同人らの本件各供述は信用できる。

そして、証人小山嘉晄の供述によれば、本件財布の時価は約四〇〇〇円であり、そのなかには現金約三万二二〇〇円お

よび名刺等七点が入っていたことが認められる。

右のとおりであり、子細に検討しても、右認定事実に合理的疑いをはさむ余地は見いだせない。

(法令の適用)

罰条         刑法二三五条

未決勾留日数算入   刑法二一条

執行猶予       刑法二五条一項

訴訟費用の不負担   刑事訴訟法一八一条一項ただし書

(量刑の理由)

本件犯行は、単純な偶発的犯行で、被告人には同種前科はなく、常習性も認められない。また、被害額も比較的軽微であり、被告人は二一三日に及ぶ長期間勾留されていることなどを考慮すると、本件被害の弁償がなされておらず、被告人には反省がみられないなどの点があっても、主文のとおり、懲役六月とし、三年間刑の執行を猶予するのが相当である。

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